デザインの優しい嘘と残酷な真実

ゼロからのプロジェクトではなく、既存のサービスやプロダクトのリブランディングの依頼を受けた時、たいていクライアントが見せてくれるネーミングやロゴは本人が思っている以上に酷くて、優しい嘘か、残酷な真実か、どう伝えるか迷う。偽物のブランドバッグで騙されてる人に、わざわざ偽物だよと教えるべきか否かの葛藤と似ている。

現状のネーミングやロゴを優しい嘘で褒めて適当に誤魔化せば、仕事の工数は減る。一方で、残酷な真実を伝えることは、クライアントの気分を害し嫌われ、最悪の場合は契約を失うリスクもある。

今のデザインが良くないからプロに相談しているので、遠慮せずゼロからやり直してくださいと言ってくれるクライアントはやりやすい。困るのは、クライアント自身や安いビギナーデザイナーがデザインして、口では謙遜しながら心の中ではそこまで悪くないと勘違いしているケース。主観的、感情的になり、客観的、論理的な判断ができていない。見慣れると不細工も綺麗に見えるようになり感覚が麻痺しがちである。

フォローしておくと、今はまだ粗悪なデザインでも、リブランディングをプロに依頼している時点でデザインの大切さを既に理解しているので、優秀なデザイナーさえいればその会社は素晴らしいデザインを世に送り出す。初期段階でデザインにリソースが割けないこともあるのはわかる。本気のプロジェクトなのにいつまでもデザイナーをけちってしまうことが最大の機会損失、大間違い。デザインに投資する会社は、4倍の利益、2倍の成長というデータが証明している。(参考:経済産業省・特許庁『「デザイン経営」宣言』)

まずは今あるものをできるだけ活かせるデザイン考えるし、リスクとリターンを検証し変化を最小限にすることもあるけど、ゼロから再構築する方がベターなケースは多い。お寿司で例えるなら、元の素材が悪いとどんな名料理人が調理しても限界がある。プロが厳選した素材をプロの料理人が調理することで最高に美味しいお寿司になる。

今月もクライアントに勇気を出して残酷な真実を伝えた。前向きにネーミングから考え直すことになった。自分で考えた名前を批判されて嬉しいわけがない。受け入れる度量と変化のリスクを受け入れることができる経営者は尊敬する。

絶対に最高のネーミングとロゴを創ると火がついくタイ・チョンブリーの午後。

リブランディングの相談は、20年以上世界中でネーミング、ロゴデザインを研究するU23 Design Factoryへ