ルーフトップテントサウナのあるd3 Hotel+のTシャツをデザインしました。前回の記事でも伝えた通り、なんとなく素人が作ったTシャツは、身内以外はゴミ箱行きなので、宣伝しながらもスタッフやユーザーが着れるTシャツを目指しました。センスの良いものを身につけて彼女たちの感性も磨かれたら理想です。
クライアントの下書きを元にしたものから、全く違う発想のものまで、上っ面の見た目のデザインだけでなく、機能するデザインやストーリーを描きました。
プロダクトデザインは、紙に描くグラフィックデザインと違い物質の知見が必要です。グラフィックデザイナーとプロダクトデザイナーの大きな違いです。
具体的には、限られた予算内でできることを考え、サウナに合うオーバーサイズにしたり、オーガニックな生地にしたり、デカデカしたロゴで宣伝するより、控えめにセンスよくブランドの統一感とハーモニーを重視してロゴを刻印します。一枚目なので、ブランディングの統一を重視し、あまりアグレッシブなデザインは避けました。
印刷方法もいろいろあり、例えば、家庭でもできるアイロンプリントとシルク印刷では、全く高級感が違います。着ている時は見えないタグも、ブランディングに重要なポイントです。縫い方により着心地や耐久性も変わります。
Tシャツを手にする体験を彩るショッピングバックのイメージも作りました。一流のブランドのプロダクトはパッケージやストアなどショッピング体験のデザインまで徹底しています。今回のショッピングバッグは低予算で実現可能なものですが、予算が許せばパッケージだけでもまだまだこだわれます。他社が気にしない商品であればあるほど差別化できる部分です。
たかがTシャツ、されどTシャツなど注意すべき点はたくさんあります。U23のデザインとは、絵を描くだけではありません。肌触りから香りまで全てがデザインです。U23のデザインとは、物事の本質であり、問題を解決すること、機能すること、物語を伝えることです。
視覚部分だけですが、実際にクライアントにプレゼンテーションしたデザインの一部はギャラリーでご紹介します。
制作までのだいたいの流れはこんな感じです。目的や状況により順番が前後したり違う流れになることもあります。
1. まず、Tシャツを作る目的や予算をヒアリングし、使う場面をイメージしてTシャツが本当に必要かどうか、必要ならどんなものが良いかコンセプトを考えます。
2. 次に、希望や目的に応じた理想のTシャツのラフイメージをコンピュータ上で描きます。
3. 並行して、費用や納期を考慮した実現可能なTシャツのサンプルを収集し、生地や形印刷、耐久性などをチェックしならがアイデアを広げます。
4. そして、仮想空間と現実空間、理想と現実の世界を何度も往復し、試行錯誤を繰り返しながら、ベストのデザインを探します。
5. デザインが決定したら、業者に発注し製作をしてもらいます。
Tシャツのデザイン・プロデュース料は、5万円から20万円ぐらい。素人やTシャツ印刷会社の雛形ならデザイン料は0円。ほんのちょっとデザインに投資してゴミ箱行きを止めるか、安物買いの銭失いか。高いと思うか安いと思うかは物事の見方次第。参考までに、デザインに投資する企業は、4倍の利益、2倍の成長というデータがある。(出典:経済産業省・特許庁『「デザイン経営」宣言』)
おそらく今の日本では、まだデザインの価値をわかる人は一部だろう。それでも、ファンが一人でも増えたらどうだろう。中小企業はたった一人のファンが経営を変えてくれることもある。U23の歴史でそれは証明されている。
ゴミ箱に捨てられないTシャツのデザインは、U23 Design Factoryへ